ひたひたになるくらいの量のアルコールで
右腕の内側を消毒してもらったようですが、・・・?
完全にビニールシートにつつまれているのにどおして腕にアルコールのひんやり感を感じるんだろう。前ふたつの疑問が一段と強い疑問にパワーアップです。たぶん、これは本当に多分ですけれど、右腕の内側だけ少し切り取ったか、もともとこの部分だけめくれるようになっていたのだと思います。たくさんたくさん消毒してもらいました。シャワーを浴びた後に救急車で搬送されたとはいえ、今から血管を通じて心臓まで管を入れようって言うんですからしっかり消毒はお願いしたいです。
「では麻酔からいきます」の声とともに右腕の内側にちくっとした感覚がありました。採血で感じるほどの痛みではなく、医者嫌い、注射大っ嫌いの自分でも極簡単にこらえることのできる痛みです。2本か3本注射したような気がします。T先生、マスクをしているせいか看護婦さん達に出していると思われる指示を自分は聞き取りにくい状況でした。一度だけ、痛いと言うよりも少し重く痛い感じがしたときがあります。だからといって全体を通じて何処かが特に痛いとか、気分が悪いとかはありませんでした。
T先生は常に右腕をぎゅっと押している感じです。押されていたいとかはなく、動かないように押さえているんだな、って感じです。もしかしたらT先生が押さえているわけではないかも知れません。
何分間か、なにもしていない時間が過ぎた気がします。腕に重さだけを感じたまま、自分はただただ仰向けに寝ているだけです。機械から電子音の心音が聞こえます。機会の音のほかは時折看護婦さんが歩く音や誰かが指示を出している声が聞こえます。さすがに緊張からか、眠くなることはありませんでした。少しだけばたばたし始めました。相変わらず自分には聞き取りにくいのですが、T先生がてきぱきとした感じで指示を出しています。どうやら今度こそカテーテルが血管の中にはいるようです。血管の中になが〜〜い異物が入る、今想像しても変な気分になります。
ここでふと気付いてしまいました。左腕ははっきりとビニールシートに軽く触れているのを認識しています。のどの辺りもビニールシートを明らかに感じています。肝心な心臓の真上、胸の部分も同じ状況です。では主役の右腕はと言うと、”誰かに押さえられている”のはわかるのですが、ビニールシートの感覚がわかりません、右腕の内側に神経を集中してみてもまったく感覚がありません。
はっきりしました、部分麻酔はどうやら右腕だけのようです。と言うことは押さえられている感覚も、単に腕がだるくなってきた感覚なのかも知れません。結局これはわからずじまいでしたが、右腕以外には麻酔がかかっていないことが判明しました。
いまから血管の中をカテーテルが通ります、血管の内側には神経があるんだろうか?カテーテルが通り過ぎるのを感じるんだろうか?ちょっとした恐怖です。そのようななか、T先生の声が聞こえました。「ではいきま〜す」
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狭心症